半身浴とアンビエントミュージックで彩る、 朝のひととき~カフェバー&レコードストア店長のチルタイム~

半身浴とアンビエントミュージックで彩る、 朝のひととき~カフェバー&レコードストア店長のチルタイム~

2021/12/23

今回、「音楽×朝」をテーマにお話を伺ったのは、カフェバー/レコードストア「CITY COUNTRY CITY」(東京・下北沢)の店長・平田立朗さん。このお店は、1990年代から日本のロックシーンで活躍する「サニーデイ・サービス」の曽我部恵一さんがオーナーを務めています。


平田さんは専門学校を卒業後、一度はアパレル企業に就職しましたが、音楽への想いが強くなったことから1年ほどで退職。国内外のライブやパーティーをメインに、DJなどの音楽活動にのめり込んでいきました。


「25歳のとき、学生時代からずっと好きだった曽我部さんとイベントで知り合って、友人になりました。僕は当時から渋谷のディスクユニオンで働くほど、レコードが大好きで。いつかレコードショップをやりたいという夢を持っていました。それを彼に話したら、『おもしろいね、やってみよう』と話が進んで。曽我部さんがオーナーで、僕が店長という形で開業することになりました」


CITY COUNTRY CITYの開業は2006年、平田さんが29歳のときのこと。最初はレコードショップとして始めたものの、時代はレコードブームの前で、レコード販売だけでは経営が厳しい状態でした。そこで、お酒や食事も提供する現在のスタイルに落ち着いたといいます。


「うちは、友達と集まれたり、パーティーができる場所というのがコンセプト。内装もすべて手作りしたんですよ。時間とお金はかかりましたが、自分たちも愛せる店内をつくれたと思います」


使い込まれた雰囲気の漂う木の家具や床、白い壁。壁一面に展示してあるさまざまなジャンルのレコードは、すべて平田さんが買い付けたものです。


「今はコロナの影響で行けておらず、レコードの通信販売も仕事全体の2割になってしまったのですが…以前はアメリカを中心にヨーロッパにも遠征して、現地のレコードショップやコンベンションなどで買い付けをしていました。年に4回ほど海外に行き、お店も深夜まで営業していたので、コロナ前はガッツリ働いていましたね」


とはいえ、現在もカフェ業務で忙しくしているという平田さん。ゆったりと自分らしく過ごす時間は、どのように取っているのでしょうか。


「14歳の娘がいるので、自宅でゆっくりするのは子どもが寝てからですね。妻が好きなアロマをたきながら、音楽を聴いたりしています。コロナをきっかけに時間の使い方への意識が大きく変化したんですよ。それまでは、今日できることは全部やってしまおうと、休みなく働くスタイルでした。お店を始めたタイミングで娘が生まれたので、10年間くらい、ものすごく頑張っていたんですね。でも、コロナでお店を閉じた期間があって、営業を再開しても今までのように夜中まではできない。この先の社会情勢も、どうなるかは分からない。そうなったときに、ものごとに対してもう少し柔軟になろうとか、家族とゆっくりする時間を取ろうと思えるようになりました」


そんな平田さんが毎朝必ず取り組んでいるルーティンは、半身浴。本やスマホをおともに、ぬるま湯より少し熱いお湯にゆったりと浸かるのを、5年ほど前に始めたのだそう。


「朝5時半から6時の間に起きて、子どもが起きてくるまで半身浴をしています。妻が勧めてくれたんですが、始めてみると一日の体の調子が良い気がする。それでずっと続けています」


ほかにも、毎日の筋トレなど、数年前から体の調子を整える習慣を取り入れているのは、「この仕事を長く続けていきたい」と思っているからこそ。年齢を重ねても、音楽への興味が尽きることはありません。


「世界中の音楽を聴きたいんです。常に新しい音楽を求めているのは、そこに発見や感動があるから。世界のいろいろな音楽を、たくさんの人に聴いてもらいたいなと思います。そして何より、カフェのお客さんが『よかったな』とか、帰りに友達と『また来ようね』と言ってくれたりとか、あたたかい気持ちになってもらえたら嬉しいですね」

 

朝のチルタイムにおすすめのプレイリスト

自宅ではずっと「アンビエントミュージック(静かな音響と微細な表現で、環境・場に溶け込み、気持ちを開放的にすることを目的とした音楽)」を聴いているという平田さん。生活音に混ざってゆったりと聴けるため、朝に流すのにおすすめだそう。今回はアンビエントを中心に、朝のチルタイムにおすすめのプレイリストを5曲選んでいただきました。

 

  1. Nala Sinephro「Space1」from『Space1.8』

    イギリスのジャズ・シーンを沸かせた、カリブ出身のベルギー人女性アーティスト  Nala Sinephro(ナラ・シネフロ)。ジョン・コルトレーンの思想を受け継ぎ、アンビエントとスピリチュアルジャズがほどよく混ざった曲調が特徴的。今回は、デビューアルバム『Space1.8』より「Space1」を選曲しました。水のせせらぎや鳥の鳴き声なども楽曲の中に取り込みながら、心地よく包み込まれるメロディに癒されます。

  2. Keith Jarrett「THE KÖLN CONCERT Part IIc」from『THE KÖLN CONCERT』

    ジャズ・クラシック界を代表するピアニスト Keith Jarrett(キース・ジャレット)。今回選んだのは、キースの体調とピアノのコンディションが最悪な中で演奏された即興コンサートの1曲。平田さんは「雨の日に合う曲。余白のある感じが好きで、この曲はずっと聴いていくと思います」と語ってくれました。

  3. 盛岡夕美子「Komorebi」from『余韻(レゾナンス)』

    元作詞・作曲家で、現在はアメリカでショコラティエとして活動する盛岡夕美子さん。1987年に発表されたアルバム『余韻』のレコードが最近になって再販され、話題となっています。ピアノによるアンビエントミュージックで、穏やかに奏でられたメロディの1音1音は余韻が印象的。

  4. Penguin Cafe Orchestra「Air a Danser」from『Air A Danser』

    アンビエントミュージックの提唱者とされるブライアン・イーノのレーベルに所属する、イギリスの室内楽バンド。ケルト音楽を軸に、クラシックや現代音楽などの要素を取り入れたサウンドは爽やかな心地よさがあり、朝食を取りながら聴くのにもぴったりな楽曲。

  5. Virginia Astley「 From Gardens Where We Feel Secure」from『 From Gardens Where We Feel Secure』

    1980~90年代に最も活躍したイギリスの女性アーティストのひとり Virginia Astley(ヴァージニア・アストレイ)。このアルバムは、オーボエやフルートによるインスト楽曲を中心に収録。イギリスの田園風景やファンタジーの世界が見えるような、幻想的なサウンドが朝のチルタイムを彩ります。最近人気が高まっているというこちらのレコードには、MorningとAfternoonの副題がついているのもポイントです。

 

 

プロフィール

 

平田 立朗 / HIRATA TATSURO

1977年生まれ。下北沢にあるカフェバー/レコードストア『CITY COUNTRY CITY』の店長。文化服装学院を卒業後、アパレル会社に就職するも、音楽への想いが強くなり退職。DJを中心に音楽活動にのめり込む。アーティスト・曽我部恵一さんと出会い、2006年に同店を共同で開業。カフェ業務を担いつつ、レコードの買い付け・通販なども担当している。イベントでのDJや選曲など、音楽活動も継続中。人生を変えるほど音楽にのめり込むようになったきっかけは、アメリカのロックバンド・ニルヴァーナ。

店舗情報 / CITY COUNTRY CITY

HP : http://city-country-city.com/

instagram : @citycountrycityshimokitazawa

 

ライター / 市岡

人の話を聞くのが好きなライター。星野源さんをこよなく愛しつつ、最近ハマっているのはCityPop。

(取材日:2021/12/06、 取材地:CITY COUNTRY CITY、 編集:佐藤、 撮影:ひらはらあい)